故きを温ね、新しきを知る(3月8日配信メルマガ)

決められたわけでは無いものの月に2回のメルマガを書いてきましたが、ついにネタが思いつかない。そんな日々が続いていました。他にも企画が沢山あり優先順位が下がったという事情もあったのですが、なかなかスイッチが入らなかったというのもありました。

だいぶ春です。


そんな中ちょこちょこ読んでいたSPECTATORのポートランド特集。紙面にあったオールドファッションという言葉にピンときました。

オールドファッションとかオールドスクールとか。

やっとメルマガが書けそうです。

オールドファッションとか言ったそばから初のHTMLメルマガでお届けいたしました


目次

1.故きを温ね
2.廃棄物を宝に
3.ドープな音楽をもっと
4.手前で作る
5.今、田舎が熱い。本当に。



1.故きを温ね

オールド(古い)と言うとどうしても後ろ向きなイメージもありますが、実際のところはどうでしょう。温故知新という言葉がありますが。故きを温ね、新しきを知るということは多分にあります。そもそも過去と経験から新らしいものが生まれ出てきます。故忌野清志郎氏が彼の作品『温故知新』の中でこう歌っています

「初めての事も 新しいとは限らない」
「古い世界も 知らないくせに
新らしい事など 何もできっこないさ」
「古いとか新らしいとか しゃらくさいことさ」

古いとか新らしいとかを超えた本質の部分への要求が大きくなっているのは、三宅商店の売れ筋商品を見ていると良くわかります。手作り関連の書籍も驚くように旅立っていきますし。

素晴らしい商品を開拓して新商品として皆様に提示するのは三宅商店の永遠の課題ですが、近頃新規の取り扱いを断られるなんて事もあったり。その理由は、新規の取引をしていないとか、近くの販売店が取り扱っているとか、対面販売を重視し始めたとか。(店主のキャラが濃すぎるとかもあるでしょうが笑)

こういった話を聞くと残念だと思うと同時に、その生産者への信頼が増します。とりあえずどこでもいいから商品が売ってくれればいいという時代から、各取引先の事も考慮しながら、一つ一つ確実に商品を紹介して、顧客と長い付き合いをしていくという時代へのシフト。なのかもしれません。

古いとか新らしいとかを超えたオールドファッションから見えてくる普遍性を三宅商店の商品を通して覗き見てみようと思います。


2.廃棄物を宝に

「アップサイクル」って聞いた事ありますでしょうか?従来行われてきたリサイクルは素材を原料に戻して新たな製品を生んでいました。ペットボトルがフリースになるように。しかしアップサイクルは単なる再利用ではなく、アップデートした製品を作ってしまおうという試みです。例えば使い古したスケートボードを椅子やギターにしてしまおうというように。

洋服は成長して体型が変わるときれなくなるものですが、和服はそうではありませんでした。着物は仕立ての際にほとんど生地を余す事なくしかも直線的に裁断していくので、糸を解いて繋ぎ合わせれば元の反物に戻ります。そんな和服文化においては子に孫に一枚の着物を繋いでいくことは当たり前でした。そしてボロボロになれば座布団や巾着やお手玉に。

アップサイクルなんて目新しい響きの言葉も、少し振り返れば当たり前にあった生活の形でした。廃棄する前に、これって何かに使えない?そんなちょっとした気遣いや工夫がビジネスチャンスになる。まさに「故きを温ね」なムーブメントです。

三宅商店が最近取り扱い始めたランプシェードと蚊取り線香入れはマダガスカルでドラム缶から再利用して作られたもの。廃棄されるか、そのまま放置されてしまうようなドラム缶からモダンなインテリアが生まれる。ただ資源を一方通行的に食いつぶすだけだった時代からの脱却が今始まっています。それもおしゃれに。


3.ドープな音楽をもっと

先日のこと、2016年の選挙フェスでも文字通り神がかったドープなパフォーマンスを見せてくれた〇〇さんのCDを取り扱いと思ってレコード会社に電話したところ、新規だったり小口はやっていないそう。なるほどちょっとしたセレクトは無理な条件でした。そもそもがYOUTUBEやダウンロード時代になので、CDで新規なんて話も久しくなかったとか。と、申し訳なさそうに対応いただきました。

個人的にも高校時代にLED ZEPPELINのベスト版をなけなしのお金で買ってMD(!)に入れたのを擦り切れるまで(MDは擦り切れない)何度も何度も聞いてましたが、今やYOUTUBEが多くなりました。YOUTUBEもマニアックな音源を見つけるにはいいのですが、無尽蔵にデータが転がっている分、一つの作品をしっかり聴き込む事も少なくなってきました。

でもやっぱり運転中とかランニング中にアルバムで作品を通して聞くと違います。

情報にあふれる時代だからこそ、一つ一つの質を追求したい。三宅商店はCD(時にはレコード)のラインナップをしっかり充実させていきたい。そう思っています。この音楽はもっと聴かれるべきだ。そんな音楽はたくさんあります。それを皆様に繋いでいくのが三宅商店の役目の一つだと思っています。

そしてついに国内最強のアフロビートバンドと言われた『キングダム☆アフロックス』のCDが取り扱い開始になりました!アフロビートを軸にジャズ、ブラジル、ラテン、ロックなど様々な要素を取り入れた独自のスタイルの音楽を確立。2013年の選挙フェス渋谷でも素晴らしい演奏(応援)を披露してくれましたが、2014年沖縄で行われた残波JAM出演を最後に惜しまれつつも解散を発表。約9年間の活動に幕を下ろしました。音楽って楽しい。改めてそう思わせてくれるバンドです。

4.手前で作る

最近三宅商店で飛ぶように売れているのが「味噌」関連商品。味噌の材料となる大豆を扱い始めたらあっという間に完売するわ、同じく材料の麹はすでにスタンダードの仲間入り。味噌をはじめとした手作り方法を学べる書籍がヒットすれば、味噌作りの工程が一目でわかる手ぬぐいが何度も再入荷。

手前味噌。手前とは自分とか自前という意味。すなわち自家製味噌ですね。

既製品の味噌も美味しい。間違いない。でも手作り味噌は「超」がつくほど美味しい。岡山事務所の台所にも店主・三宅が作った味噌が置いてありますが、これだけで味がしっかり決まります。

味噌作りは冬、というイメージもありますがそんなことはありません。夏にだってできます。「塩なれ」という塩辛みが馴染んで柔らかい風味になるまでの最低3ヶ月間は待ちますが、その後の熟成期間は好みだし、カビが生えても生えなくても美味しい。こうじの量を変えれば甘みも調整できます。味噌は種類も地域差も本当にたくさん。だからこそ味噌造りに自由を。

三宅商店でも近々味噌を作る予定。皆様もやってみませんか?手前味噌作り。

5.今、田舎が熱い。本当に。

前回のメルマガ(時は来た!芽生えの季節)に登場したカイルさんがパーマカルチャーセンターを開く予定の岡山県久米南町上籾(かみもみ)地区でカイルさん出演のイベントがあったので、商店スタッフで行ってまいりました。カイルさんもまだ移住前なのに行政ぐるみで動き出して、公民館を借り切ってのイベント。すごい!地元の人を含めた100人以上が小さな集落に集まり充実のイベントでした。

山陽新聞に取り上げられています↓

イベント後にはカイルさんに上籾を案内していただきました。上籾は棚田百選にも選ばれる美しい田園風景の山村。三宅商店岡山事務所と同じく60,70,80代の人がほとんどの集落。地元の人からしたら当たり前で、もはや面倒な存在にもなっている古民家や棚田といった要素はは視点を変えれば大きな価値だし宝物。実際にニーズは高まっています。

オールドからニューへ。オールドがニューへ。

同じイベントにパネラーとして参加していた林良樹さんが住むのも棚田百選の集落。世界を旅した後、約20年も前に千葉県は鴨川の古民家に移り住み時間をかけてその土地の人たちと交流を重ねては、今では世界中の人が「鴨川に移住したい!」と思えるような地域になり、無印良品とコラボをするまでになりました。

無印HP上の林さんによるブログ↓

千葉・鴨川

コラム一覧2月最初の週末、僕はいすみ・大多喜ツアーへ行ってきました。 いすみ方面は鴨川から1時間ちょいと北上した距離で、同じ方向を見つめている友人・知人が多く、個人的にイベントなどでは時々顔を合わせるのですが、お互いそれぞれのフィールドでの活動が忙しく、実は膝を交えてゆっくり交流する機会はありませんでした。 なので、農閑期の今なら動けるので、今回は思い切って鴨川の友人たちと泊まりがけで出かけることにしました。初日の午前中は、大多喜の古民家ゲストハウス「わとや」へ行きました。 友人のカズさんは里山のてっぺんにある古民家を遊び心満載にリノベーションしてゲストハウスを営んでいます。 古民家へ入ると大胆にも茅葺屋根をぶち抜いた天窓から明るい光が差し込み、天井にはツリーハウスのような屋根裏部屋、素晴らしい眺めの絶景テラス、1枚板のバーカウンター、薪でごはんを炊くかまど等々、ワクワクする素敵な空間が広がっていました。 そして、古民家のすぐ下には富士山を望む空中ブランコがあり、まるで空へ飛んでいきそうなこのブランコに乗ると、あまりの楽しさに思わずみんな笑い出しました。その後、養老川の最上流の清流を渡って、耕作放棄地を再生した秘境の田んぼへ案内してもらうと、そこはホタルが舞う生物多様性の宝庫として蘇っていました。 カズさんは隣の老夫婦と親しくお付き合いし、この地域を「食べられる公園」として、訪れる都会の人たちと一緒に守っていこうとしていました。少年のような目で情熱的に夢を語るカズさんに、僕らは胸をガツンと打たれて感動しました。それからいすみへ移動し、友人のおんちゃんとあきこさんが経営する畑付きエコアパート&オーガニックカフェ「green+」(グリーンプラス)へ行きました。太陽の光がタップリ入るオシャレなカフェは開放的な空間で、僕らは料理人のおんちゃんが作るおいしい玄米菜食ランチをいただきました。 内装に自然素材を使ったエコアパートはパッシブソーラーで設計されているため冬はポカポカで夏は涼しく、全室に薪ストーブが設置され、その熱は2階へ伝わる工夫がされており、さらに家庭菜園ができる庭もあり、"つらくない快適な田舎暮らし"を提供しています。いすみは東京へギリギリ通勤圏なので2地域居住や移住がしやすいエリアで、駅から徒歩10分の「green+」はすでに全室小さな子どもを持つ家族が入居し、

www.muji.net

さらにはその棚田の米を使って寺田本家さんと日本酒のコラボ!

天水棚田でつくる自然酒の会Facebookページより


ソーヤー海さんのパーマカルチャーと平和道場もできるし、千葉が熱い!

同じくパネラーとして参加していた五十野園(ごじゅうのえん) の五十嵐武志さんは「冬期湛水・不耕起移植栽培」を実践する米農家。冬の絶妙(これが大事)な時期に田んぼに水を入れることで、田んぼを育む生き物と植物の生態系を作り出し、雑草がほぼ生えないという!なので農薬は使わない。実際五十嵐さんは田植え後には田んぼに一切入らない。硬い地面を作るとかいろんなポイントがありますが、方法論に従えば誰でもできるとも言います。冬季に準備をしっかりするぶん、田植え後は草取りをしなくていい。すごい!

カイルさん、林さん、五十嵐さんに共通するポジティブさ。それでいて楽観的でなくとても実際的。田舎とか古民家とか無農薬ってどうしても重労働で非効率で、ってイメージがあるかもですが、彼らは高い専門性を伴って確実なプラスを生み出しています。楽ではないのは当然ですが、これも視点の問題。里山の技術や文化、その場の植生や地形、そして美しい環境を保つことは、1000年かけて作り上げたその土地の歴史をつないでいくこと。短期的な利益の為に1000年を失っていいの?それって果たして利益なの?

三宅商店では日本古来の暦をことあるごとにお伝えしていますが、ここのところ改めて実際の季節との連動性に驚いています。今年の新暦2月18日は二十四節気の「雨水(うすい)」でこの頃に春一番が吹くのですが、三宅商店岡山事務所周辺で一番風が強かったのはまさに18日でした。そして新暦3月5日の「啓蟄(けいちつ)」は「冬籠りの虫が這い出る」という意味ですが、この日を思い出したのはその前日にとあるスタッフが「虫が出てきたねー」と言ったから。

私たちの祖先が連綿と繋いできた知恵なしには新しい価値は生まれ得ないのではないでしょうか。

だからこそオールドスクール。温故知新。故きを温ね、新しきを知る。

「初めての事も 新しいとは限らない」
「古い世界も 知らないくせに
新らしい事など 何もできっこないさ」
「古いとか新らしいとか しゃらくさいことさ」

大事にしていきたいと思います。

それでは!

0コメント

  • 1000 / 1000