さて前回の記事に続きまして、3月19、20日に行われたSHINE(社員)研修『春分の塩炊き2017』の実践編をいつもとは趣きの違うフォトレポート形式でお伝えいたします。
まずは何しろ塩を作る海水が必要なんですが、ここは岡山の山村。海まで行かなくてはなりません。今回はたまたま大分の佐野団長が訪ねてくれていたので、塩炊きを目前に控えた3月17日、団長の天ぷら油カーで鳥取に海水を汲みに行って来ました。
過去3回の塩炊きは沖縄でしたので今回は初めての本州。海水採取スポットを探して海岸線をにらめっこ。ビーチだと砂が混じるから岩場の穴場を探さねば。大豆も真剣に鼻を働かせています。
ちょっと寄り道。大豆はボール命です。あっ!取られた!
そんなこんなでやっと良さそうな岩場を発見。場所は鳥取県夏泊神社近く夏泊海岸。水も綺麗。その代わり不安定な岩場の上を海水で一杯になったポリタンクを持って運ばねばなりません。美味しい塩を作るためなら!
さて、これで全て準備ができました。今回使うのは以下の通り。
・海水240リットル(これでできる塩は大体4kgくらい)
・薪(全て廃材と間伐材)
・寸胴 2個
・平鍋 2個
・カマド 4口(2口はホームセンターで買った既製品。2口はコンクリートブロックを組んでカマドとしました)
・かす取り
・フライパン
・しゃもじ
・たらい
・ざる
・さらし
大阪は中津の冨貴工房から冨田貴史氏を講師にお迎えしていざ塩炊きの開始です。
カンカンカーン
まずは火起こし。火打ち金に糸魚川産のヒスイをカチン。コツはマッチをするようにだそうです。それによってできた火花(1000℃を超えるとか!)を棉炭でできた火口に飛ばします。今回は初体験ながら一回で着火。火種ができたら息を吹きかけて育てます。そこに付け木(今回は古紙)を使って引火。火口はドンドン燃えるので蓋をしてて消火します。
火がついたらまずは寸胴で海水を沸かしていきます。
それと同時に平釜用の簡易カマドをこしらえて
寸胴で火にかけて濃縮された海水を平釜に移してどんどん蒸発させていきます。
減った分の海水を寸胴に追加。これの繰り返し。寸胴で大量に沸かして平釜で蒸発。それぞれの良さを最大限に活かします。
灰がちょこちょこ入りますので時々かす取りですくい取ります。
海水の塩分濃度はもともと3.4%くらい。これをどんどん煮詰めて約13%になるとまずはカルシウム分が析出してきます。そのまま炊き続けると約20%でナトリウム分が固まり始め、やっとしょっぱくなってくる。そして27-28%くらいでカリウムとマグネシウム分が析出。このまま続けるとどんどん苦くなっていきますので、塩分濃度が30%位に達したら塩を引き上げます。そうして残ったのがニガリ、苦汁、主成分がマグネシウムの苦味成分です。豆腐を固める凝固剤ですね。それもこれも翌日の明け方の話。
一方で昼食の準備も着々と進んでいます。天気が良いので外で下ごしらえ。
そして昼食。頂きます!
ご馳走様の後は火の調子を見ながらも、畑仕事をしたりキャッチボールをしてリフレッシュ。
ボール命。
そうこうしているうちにあっという間に日は暮れまして
海水を炊き続ける長い夜の始まりです。
沸かして沸かして。筆者は仮眠へ。
からの寝坊。。。塩の全貌が少しづつ見え始めました。
そしてついに、塩!
ぐるぐると遠心分離して、塩の結晶と水分(にがり)を分けます。
布を貼ったタライやらザルの上に塩を広げていく
塩はそのままにしておくとすぐに水気を吸って液体になってしまうので、風通しの良い天日の下で薄く広げて乾かしていきます。だからこそ一晩中海水を火にかけて、明け方に塩を引き上げれるように調整しなくてはなりません。夜明けは霧が濃くて心配しましたが、次第に太陽の光が差し込んできました。
軽トラの上で天日干し。太陽の力はすごい。次第に水分が抜けて見慣れた塩に近づいていく。天日のみで乾かすこともできますが、好天が続くことと、時間に余裕がないといけません。これは数日を要する作業。
三宅商店はこの3日後に味噌造りを控えていたのでフライパンで焼き塩にしていきます。店主、眠そう!根気のいる作業が続きます。
黙々と塩と向き合う。大量にできた燠火がここで活躍。
一方で寝たい時に寝る大豆
そしてついにサラサラの塩が完成!
3月19日の午前10時頃に開始して翌日20日の昼過ぎ、ついに全ての海水がサラサラの塩に生まれ変わりました。各工程でこれでもかと味見をしましたが、改めて味見。うん、うまい!塩は塩味だけにあらず。含有するミネラル分が織りなす甘みや苦味の混ざり合った絶妙な旨味が凝縮されています。そうです本物の塩はうま味調味料そのものだと言えます。
筆者にとっては初めての塩炊き体験でしたが、「沖縄と違って塩の出来上がりが早い」という言葉が印象に残りました。「晴れの国おかやま」と銘打っている岡山県だけあって、肌で感じるほど晴天率が高い。結果、海水を沸かし、塩を乾かし、最後にフライパンで炒る全ての過程において効率よく水分が抜けていったのかなと思います。
製塩の歴史を紐解いていくと、初めて潮の干満を利用して塩田に海水を引き込む製法を確立したのが瀬戸内海に面したエリア。長門(山口県)、周防(山口県)、安芸(広島県)、備後(岡山県)、備中(岡山県)、備前(岡山県)、播磨(兵庫県)、阿波(徳島県)、讃岐(香川県)、伊予(愛媛県)の10のエリアで作られた塩は十州塩と呼ばれ、品質の高さで評価されていたとか。塩炊きを通じて意外にも岡山の素晴らしさにまたひとつ気づくことができました。
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2日にわたる塩炊きを終え、最後は近くの温泉で溜まった疲れを癒す。新年度を控えスタッフ一同結束を新たにすることが出来ました。これから商店スタッフの昼食にはこの塩が大活躍することになります。食卓を囲めば思いだす塩炊き。何気ないひと時が一段と豊かになることでしょう。
そして中1日を挟んで22日からは別のビッグイベントが控えていた三宅商店。暖かくなり周囲でもイベントが増えてきています。縁と縁がとりもつパーマカルチャルな今後の展開にご期待ください。
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