三宅商店が本拠を構える吉備中央町の和田地区より精米用の水車が復活したとのニュースが舞い込んできたのはこの夏のことだったでしょうか。吉備中央町の地域おこし協力隊員である古賀智己くんの熱い想いが地元の人を動かし、4年間使用されないままになっていた水車を任せてもらうことになったのです。
元々は平成2年に高齢者と若者の活性化事業として建てられた水車でしたが、中山間部の人口の減少と後継者不足が深刻には逆らえませんでした。しかしこの吉備中央町でも原発事故以降、移住者の数は増えていき、2年前より、転入世帯数が転出のそれを上回るようになったそうです。
そしてその移住者たちは田舎には何もないと思う人たちでなく、豊かな資源であふれていると知っている人たち。かくしてこの和田地区の水車の新しいチャプターが始まる機運が醸造されていったと言えるでしょう。
三宅商店でもその水車を使って精米したお米を販売しようと、早速、智己くんと相談をしていたそんな矢先、水車に再びピンチが訪れます。衆院選の投開票日の10月22日に猛威を振るった台風の影響で土砂崩れが発生。水路が塞がれて、水車が動かなくなってしまいます。しかも、重機がないと土砂を除去するのが難しいという話も舞い込んで来て・・・
しかしそこでタダでは終わらないのが智己くん。台風被害から間も無く、彼一人で人力で復興させたとのニュースが!半端ではない気合い。こちらも気が引き締まります。
水車復旧!早速精米
そして復旧ご早速の10月25日、お米を精米するというので見に行ってきました。到着するや水しぶきの音、水車の回る音が心地よく響いている。
お米を臼に入れるのは夕方の7時。そして突き終わるのは翌日の朝7時。丸々半日をかけてゆっくりと精米されます。精米できるのは60kg弱。機械で精米すれば30分とかかりません。しかし機械の精米と違って高い摩擦熱が発生しないので、お米のでんぷん質を壊さず、本来の風味を保ったまま精米することができます。
臼に玄米を入れると、綱で固定してあった杵をセッティング。すると、水車の軸についている歯車が杵を持ち上げては落とします。ガッタンという音とともに杵を持ち上げ、ドスッと米に突き落とす。臼と杵は3セットあり、それらが全て稼働すると、ガッタン、ドスッ、ガッタン、ドスッ、ガッタン、ドスッ、という小気味のいい音が軽快で気持ちがいい。
杵が落ちるところに、杵の直径より少し大きいサイズの木の輪っかを入れるのですが、これがまたすごい。杵が米を突くたびに、輪っかの外の米が輪っかの中に落ちていく。輪っかの中のお米は下に潜っていってはグルっと循環して臼の端から上がってくる。これによってお米を満遍なく精米することができます。
残念ながらこの日はやはり台風の影響が残っていました。水車に流れる水が一部漏れてしまうことによる動力不足により、硬くて重い樫の木で出来た3つの杵を持ち上げることができない。夜も更け、冷え込む中で急遽、水路の復旧が行われましたが、3つのうち、2つの臼と杵を使うことになりました。
率先してなんでも取り掛かる智己くんと、事あるごとに手伝ってくれる地元のおっちゃん達。とてもよい交流関係を築けており素晴らしい。見習うところが多いです。
そして夜は明けて・・・
翌日26日の朝6時半ごろ、一番乗りで水車小屋に到着。前日は夜で何も見えませんでしたが、好天も相まってとても美しい山村が周囲に広がっている。ガッタン、ドスッ、っという音は順調に響いている。
7時には智己くんも地域のおっちゃんも到着し(やっぱり気になるみたい)精米できていることを確認してはお米を臼から取り出します。機械のように真っ白なお米になりませんが十分に精米されています。八分以上は突かれているのではないでしょうか。
普段から分づき米(真っ白に精米していないお米)に触れていると、例えば7分づきのお米は十分に白いので(胚芽が少し黄身がかる程度)、あたかも白米のつもりで食するようになりますが、そんな時に外食とかで白米を食べるとあまりの白さに驚いたりします。そんなに白くしなくても、と思うわけです。
お米の旨味の秘訣
白米を取り囲むぬかも、芽が出る部分の胚芽も食物繊維、カルシウム、鉄などのミネラル、ビタミンB1やビタミンEなどの栄養素が豊富に含まれています。玄米は浸水の時間や炊き方、消化の観点でレベルが高いと思っている人も、分づき米はとっつきやすいチョイスです。(玄米は浸水が長い以外は炊くのは簡単)
実際、お米の白い部分である胚乳を取り囲む最後の層であるアリューロン層はオリゴ糖やアミノ酸などの旨味成分が豊富に含まれています。真っ白な白米ではそんな美味しい部分まで取り除いてしまっているのです。そして前途しましたが、水車米はそんなお米本来の旨味を熱で壊すことなく精米しますので、さらなる旨味を楽しむことができます。
機械の精米機と違って、精米時に米とぬかが分離されないので、最後は精米機の「ぬか取り機能」を使って選り分けていきます。昔は当然ふるいでぬか取りをしたのですが、現在の人手不足ではなかなかそこまでは手が回りません。水車の動力は当然発電にも活用できるわけですから、ぬか取りにかかる電力や、水車小屋の灯も自給できたらイイよね!と夢が膨らみます。
そして選り分けられた「ぬか」がまた感動的。機械で精米すると割と粗さが残るのですが、水車精米によって少しづつ削られていったぬかはそれは驚くほどに粒子が細かく、しっとりしていました。ちょっと手についただけで手がすべすべに。
水車精米の様子をムービーにしましたので、こちらもご覧ください。
無農薬新米を水車で精米
そして9月の上旬。待ちに待った今期の無農薬新米が三宅商店に届きました。水車精米しようと計画していたお米は昨年DJ HIKARUさんにご紹介頂いた、お隣兵庫県は加古川のお米、その名も「神喜舞(かんきまい)」です。
神喜舞では収穫祭という名の新米収穫パーティーを開催していて、昨年のスペシャルゲストとして出演していたDJ HIKARUさんが食べ放題の新米おにぎりのあまりの美味しさにその場で三宅に電話。「これは三宅商店で取り扱った方がいいぞ」と。
昨年はすでに出荷先が決まっていたので叶いませんでしたが、今シーズンより満を辞して取り扱いが開始となりました。
そんな贅沢な無農薬米を岡山県吉備中央町に4年ぶりに復活した水車にて精米!水車で精米しているお米の販売はいくつかあれど、無農薬米の水車精米は大変貴重です!
当然少し割高にはなりますが、特別なお米として本来のご飯の味を贅沢に楽しんでいただきたい。ごま塩をかけただけとか、塩むすびとかで食べたい!
精米によって出たしっとりなめらかな「ぬか」もおつけします。無農薬のぬかなので、安心安全。炒ってふりかけにしたり、ぬか床にしたり、米ぬか風呂なんかも出来ます。
もちろん美しい里山の風景と、伝統維持のサポートにもなります。実は三宅商店のお米の精米と時を同じくして、水車の回転を臼と杵の縦方向の動きに変換するギアの役割をする水車のシャフトの羽が折れてしまいました。老朽化と、水車に供給する水量過多による負荷が原因と見られているそうです。不幸中の幸はその羽がお米の中に入らなかったこと。杵で突かれて木片だらけのお米になったら大変でした。
そんな紆余曲折を経て再び日の目を見た水車精米。収穫の喜びをあますところなく味わえること請け合いです。是非ともいつものお米と比べてみてください。
水車米ムービーに使っているBGMは犬式のギタリスト、三根星太郎のソロアルバム『Solo Solo』のオープニング曲である『Village Sunrise』。曲調からして、曲名からして、今回の動画にぴったりだったので使わせて頂きました。そのほかの楽曲もとても素晴らしく、延々と聴いていられる作品ですので、是非ともこちらもチェックお願いします。
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