Shine研修1日目 「茜染」と「べんがら染」

三宅商店といえば沖縄時代からのもはや伝統芸?お馴染み「茜染」。

先月2/22・23・24の三日間にかけて行われた恒例の三宅商店Shine研修。

1日目の染めには今回初の「べんがら染」も登場しました。

「茜染」と「べんがら染」

ともに天然の素材から作られた染色材料ですが、それぞれ茜は染料、べんがらは顔料という括りになります。水に溶けるのが染料、溶けないのが顔料で一般的な草木染と違い顔料は日光による褪色に強いのも特徴です。

使用したのは田中直染料店の”インド茜・根”と古色の美の”ベンガラ泥染め”のウコン、そして同じく古色の美の”藍錠染め”。

左は藍錠で染めた私物。右は茜染した三宅商店オリジナルのワンピース。一点のみ販売します。売切れ御免!


衣服

様々な色や柄に染め上げた布地を用いて仕立てた衣に人は身を包んでいます。


大前提としてなぜ染めるのか?という疑問の1つの答えがあります。

よく引用されるお話ですが、中国の古典・書経には

「草根木皮、これ小薬なり。 鍼灸、これ中薬なり。 飲食衣服、これ大薬なり。身を修め心を治める、これ薬源なり。」

と書いてあるそうです。

個人的にも納得のいく道理だと思いました。

薬<鍼灸<飲食衣服

薬よりも鍼灸よりも日々の食事と着るものが体に影響を与え、また体を鍛え心を平静に保つことが重要であるといったところでしょうか。


薬などを服用するという表現は、染めを施すことで衣服に染料を染み込ませ、薬効を持たせるため。つまり衣服は今で言う湿布のようなものとも捉えられていたんです。

そして草木染の色が落ちると言うことはそれ自体に意味があるとも考えられるわけですね。


茜=赤根

茜はその名の通り根が赤いことから名付けられたそうです。日本茜やインド茜、西洋茜など50種類以上あると言われてますが、日本茜はそもそも希少な上に根が細いので現在ではほとんど使われません。紀元前3000年のインダス文明の頃から存在し、ヨーロッパ、中東でも栽培され、世界の もっとも古い染料のひとつです。ツタンカーメンの墳墓からも茜を使用した布が発見されています。日本には2~3世紀頃中国から渡来したとされ、邪馬台国の時代から使われていたとも、日の丸を最初に紅く染め上げたとも言われるなど古くから使われている染料でありながら、明治の頃には化学染料の手軽さに取って代わられます。


また万葉集にも詠まれる茜は薬草としても茜草根(せいそうこん)と呼ばれ「止血・利尿・解熱・通経・強壮」などの薬としても重用されていたんだそうです。同様に茜で染めた衣類も、保温・通経・浄血・解熱・強壮といった効能 があると言われ、女性のからだを守る目的で、直接肌に触れる下着の「肌襦袢(はだじゅばん)」 「腰巻」を茜でそめていました。


詳しく工程の説明はしませんので去年のブログをチェックしてみてくださいね。

コツだけここにメモ書き。

今回は5回染めましたが、薄めからだんだん濃い染液にしていくということと、染液の温度管理を徹底すること。これでバッチリムラ無く染まりました。

べんがら=ベンガル

ベンガラは土から取れる成分(酸化鉄)で紅殻、弁柄とも呼ばれ語源はインドのベンガル地方より伝来したことからそう呼ばれています。日本の暮らしにも古くから根付いている素材で陶器や漆器、また防虫、 防腐の機能性から家屋のベンガラ塗りとしても使用されてきました。ラスコーやアルタミラの洞窟壁画にもみられ旧石器時代から使われた最古の顔料であり古代色です。 経年変化に強く、日光による褪色がないことも特徴で、昨今ではベンガラ(酸化鉄)は人体にとって優しく無害であることから天然素材として見直され繊維製品への染色、オーガニック 製品にも使用されるようになりました。 地球上に一番多く存在する「赤色」は酸化鉄といわれています。 人類にとって身近な色であり、土から取れた古代色「ベンガラ」は 大地の色であり日本の暮らしを彩る色なのです。

(古色の美より)


冨田さんオススメの古色の美のべんがらはなんと23色展開。長年の加工技術を活かし「赤」しかなかったベンガラを燃焼温度と調合により黄、黒、緑、紫といった色彩豊かな色合いをつくりだしたのです。味わい深い個性のある色を作りだすためハンドメイドにもこだわっています。乳鉢で時間をかけて、すり潰しながら作る色合いは機械には無いどこか暖かく深い色になってくれるそうです。


べんがらの鬱金で染めた店主の私物。犬Tee。袖には板締めもバッチリ。


お手軽さ

古色の美のテーマの一つに「暮らしの中の染色」があります。それは現代の暮らしの中に染めものが溶け込むということ。 掃除、洗濯、家事のように日常的に染めものをする、そんな願いがあります。古色の美の作る染料は土に帰る環境循環型の染めものです。水だけで簡単に染められて安全。だれもが楽しめる。各家庭で気軽に取り入れて染め文化が定着することでものを大事にすること、自分でもの生みだすこと、喜びを生み出すこと、そして環境への配慮へも繋がります。アーティストや染色家、クラフターや一部の趣味の材料としてだけではなく、小さなお子さんにも使っていただきたい。染料の使い方には上手いも下手もなく、色を楽しみ、その人なりの表現や楽しさ、喜びの発見に繋がればいいなと思っています。古色の美の染料はそんな思いを込めて作っています。材料は自然循環する素材を使います。そして使いやすく、想像力を刺激する。人と環境が喜ぶそんな商品を作りつづけたいと思います。

(古色の美より)


古色の美のべんがらはとっても簡単。顔料を水に混ぜるだけなんです。

茜染は染色液を煮出したりするのに手間がかかります。だから手軽なべんがら染は前述されたように染めへのハードルが下がり、また絞りに拘ったりなど表現に時間を費やすことができるのも魅力の1つです。


沖縄時代での茜染で夜中までやっていたなんて話もありまして、そうすると場合によっては辛い思い出になり、またやろうとは思いづらくなってしまうという側面もあるわけですね。


「場づくり」

最後に今回のShine研修で一番印象に残ったのは「場づくり」ということ。

メンバーは入れ替わっていても商店では茜染も味噌作りも何度もやっています。

一人一人がその場を作っている一員である。

そしてまた今回の参加者が新たな場を作る。

そのサイクルはある意味でサステナブルで、また同じ場所で繰り返しているようにも感じるけど螺旋・スパイラルで少しづつでも移動しているように思います。


「セブンス・ジェネレーション」

例えば七代先の子孫までの責任を忘れないこと。

今の自分が先祖から続いているように、これから先も続いていくように。

一人一人が今の社会を構成する一因であるということ。

何か自分には無関係な世界で全ての物事が決まっていくような感覚にはまりがちな現代社会。

自分一人が無責任な行動をしても別に構わない。

震災前は自分もそう思ってました。

身の回りの身近なものの本当の意味。

本質を捉え直すことが必要なのかもしれません。

Text by ハグ

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