くすりとたべものと日用品1:飲食衣服、これ大薬。

草根木皮(漢方薬)、これ小薬。 
鍼灸、これ中薬。
飲食衣服、これ大薬。 
身を修め心治める、これ薬源なり。
(紀元前に記された中国の古典の一つ「書経」より)


小薬とは、ある症状には効くけれど、それ以外の症状には効かなかったり、ある量を摂ると体によく働くけれど、摂りすぎると効果が減ったり逆効果になるようなもので、

大薬とは、どのような体調の時でも、頻度や量にこだわらず(限度はありますが)摂ることができ、対症療法的というよりは、根本的な体質改善に貢献するようなもの。

中薬は、その中間で、暮らしの中に適度に取り入れることが勧められているものです。


草、根、木、皮を薬として取り扱う文化は、中国に限らず、世界全域で古くから続いています。

チベット医学、インドのアーユルヴェーダ、日本列島各地の山岳密教や修験道、南北アメリカ大陸のシャーマン、メディスンマン達は、心身の治療や健康維持の為に、様々な草木を取り扱ってきました。

そして、現代医学の中で扱われている医薬品などについても、アマゾン奥地で野草を採取し、そこから薬効成分を抽出して作られたものなどが多く存在しています。


薬を摂取する方法は、日本語では主に「内服」と「外服」に分けられます。

内服は主に経口摂取、外服は主に皮膚からの摂取を指します。

そして、「書経」の中で大薬として扱われている衣服は、皮膚から直接薬効を得る、外服という方法で摂取される薬として広く活用されてきました。

薬を口から摂る時間は短いですが、肌着や衣服は、一日中身につけるものです。

世界各地の染織文化の根底には、衣服を薬として捉える考え方がありました。


日本においても、生まれたばかりの男子は陽気が高すぎるため、気を鎮めるために藍染めの肌着を着せたり、月経中の女性が血流を清めるために茜や紅花の腹巻きを身に着けたりしていました。


また、鍼灸や漢方、東洋医学のベースになっている陰陽五行説の中では「五色」は「五臓」に対応するとして「青=肝、赤=心、黄=脾、白=肺、黒=腎」にそれぞれよく働く薬としても捉えられていました。


しかし、現在は、法律による様々な規制が存在するため、薬効をうたいながら衣服を販売することはできません。


具体的には、

・何が薬で、何が薬でないかは、法律で決まっている。

・薬を販売するには政府機関による承認がいる。

・薬を販売、宣伝する際には、様々な規制や条件がある。

という状況があり、歴史の移り変わりの中で、その内容も変化しています。


そのため、三宅商店においても、心身の健康に貢献するという実感を持っているからこそ、自然素材や自然染めの商品を販売していますが、その真意を伝えることは難しくなっています。



以下、代表的な法律の一つである薬機法の内容の一部を紹介します。

(以下、「薬事法ドットコム」より、一部抜粋)


『薬機法とは』

正式名称は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律と言います。従来薬事法と呼ばれていた法律が、平成25年11月に改正されたものです。 

つまり、まず、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器の定義をします。

それによって、この法律が対象とするものが決まります。

それぞれ、次のように、定義されています


◎医薬品

① 日本薬局方に収められているもの。

② 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具でないもの。

③ 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具でないもの。


◎医薬部外品

次に掲げることが目的とされており、かつ、人体に対する作用が緩和な物であって機械器具等でないもの。

・吐きけ、その他の不快感、又は口臭、もしくは体臭の防止

・あせも、ただれ等の防止

・脱毛の防止、育毛又は除毛

・人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみ等の駆除又は防止


◎化粧品

この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。


◎医療機器

人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等


◎承認前医薬品等の広告の禁止

承認(又は認証)前の医薬品又は医療機器について、その名称、製造方法、 効能、効果又は性能に関する広告の禁止。


健康食品が医薬品の定義に該当するようなことを広告していれば、医薬品でもないのに医薬品のような効果を標榜しているという形で、薬機法違反になります。


健康美容器具も同じで、医療機器でもないのに医療機器のような効果を標榜していれば、薬機法違反になります。


・・・(引用以上)・・・


三宅商店が販売する商品の中には、心身によく働くものとしてお薦めしたいものが、数多く存在します。


しかし、これらをそのように宣伝すると「承認前医薬品等の広告の禁止(薬機法第68条など)」に抵触するため、「日用品」などの括りの中で宣伝、販売しています。


「それなら、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器としての承認を得ればいいじゃないか」という声も聞こえてきます。

そのとおりですね。

しかし、この承認を得るためには、数年間の調査と数千万円の費用がかかります。

(日本での承認制度は世界の中でも厳しいと言われています)

それだけの時間とお金を投資できる資本力がなければ、これらの承認を受けることは、とてもハードルが高いという現実があります。

実際、これらの法規制が始まってからというもの、富山の薬売りや山々の薬師、薬として染織をしてきた人達の多くが職を失い、薬の宣伝や販売の権利は、少数の大資本の手に集中していきました。


三宅商店では、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器として承認を得ることが困難な、地域に根ざして小さい規模で(場合によっては家庭の中で)作っている生産者、クラフトマン、手仕事人の作るものを扱っていきたいという考えもあり、薬効をうたえずとも、そのひとつひとつを大切に取り扱っていきたいと思います。


三宅商店が大事にしたいことの一つは「SPEND SHIFTー消費動向で世界を変える」です。

生活の中で使うもの、身につけるもの、食べるものを見つめ直すことで、

・環境への負荷を減らすこと。生態系との調和を取り戻すこと。

・心身の健康を取り戻すこと、または維持すること、高めること。

・環境や健康に貢献しようとしている個人や企業の作ったものを買うことで、それらの活動をエンパワーメントすること。

これらのコンセプトを大切にしながら、商品を選び、販売しています。


そして、三宅商店が大切にしたいことの中に「SPEAK OUT」という言葉があります。

それは、思っていること、大事だと思っていることを、口に出していこう、声にしていこう、ということです。


わたしたち三宅商店が、取り扱っている商品の効能を伝えることは難しいです。


しかし、これらを購入したり、利用している人たちが家族や友人、知り合いに対して、口コミで効能を伝えることは可能です。


環境や健康のために、それぞれが出来ること、出来ないことがあります。


そして、商店には出来ないことだけど、皆さんには出来る、ということがあります。


望む流通を、望む世界を、わたしたちの声と行動だけでなく、みなさんと助け合いながら作っていけたらと願っています。


そんな思いから、これからもこのようなテーマで記事を書いていきたいと思います。


そして、薬と食べ物と日用品のこれからについて、読者の皆さんと一緒に考えていけたら嬉しいです。


text by 冨田貴史







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