季節は冬の半ば、仲冬に入ろうとしています。
冬の真ん中は冬至。
冬至は一日の中でいえば夜中の12時。
これから外気も土も水も、ぐっと冷え込んでいきます。
冬至の日は、昼の長さはおよそ9時間半、夜の長さはおよそ14時間半。
夏至の日は、昼の長さはおよそ14時間半、夜の長さはおよそ9時間半でしたから、そこから比べて昼はおよそ5時間短くなり、夜はおよそ5時間長くなったわけです。
それだけ今は、体を温める力が弱まり、冷やす力が強まっています。
冬の養生はその対策とも言えます。
体を温める。
エネルギーを蓄える。
昔から日本の人びとは、冬は糸を績んだり紡いだり、織ったり、炭を焼いたり、塩を炊いたり、味噌を仕込んだりといった形で、外に出る仕事よりも家に籠もって出来る仕事をしながら、湯を沸かし、家と火と共に過ごしてきました。
昼は動く時、夜は寝る時という事と同様に、夏は動く時、冬は動くためのエネルギーを蓄える時、とも言われています。
生命力をろうそくの火に例えるなら、ろうそくの火そのものと、その火を絶やさないようにする力をそれぞれ「命門の火」と「精」と言います。
これらを合わせて「腎気」とも言います。
腎気は生きるための根本的な力。
これを蓄える「補腎」が冬の養生の要です。
「腎」の働きを担っている臓器は主に、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、睾丸といった、泌尿器、生殖器などで、ホルモン分泌、消化液分泌、血液の調整などを通じて体液そのもののクオリティ・コントロールを司っています。
体は水でできているので、その水質管理が生命活動の根本。
「腎」の役割は東洋医学では、成長、生育、生殖活動を司ると定義されています。
動ける体を作る、ということですね。
岡部賢二の書かれた『マワリテメクル小宇宙』には
「腎」は、成長、発育、生殖に関する働きを生涯にわたって左右する非常に重要な生命力の源で、「先天の本」と呼ばれています。
「腎」は消化液の分泌の他に血液やホルモンなどの体液をコントロールしており、内分泌系の中心をなしています。「腎」は生命の泉であり、体に潤いと若さを与えてくれます。
とあります。
体液が酸化することでかかる腎臓のへ負担。
これを緩和するための抗酸化の働きがある塩やアミノ酸を含んだ、味噌や醤油や梅干しや漬物は、腎気を補う代表的な食品です。
乳酸菌+塩+アミノ酸。
酸化還元。
綺麗な体液を作ることが、腎を助ける。
精を蓄える助けになる。
「足腰と類似する食べ物」
「腎」の弱りは足腰の弱りとなって老化をもたらします。
このとき、足腰の強化をする、足腰と同じ形をした食べ物が根菜類です。
ごぼうや人参、大根、自然薯、くず、高麗人参など足と同じ形をした根菜類は、足腰の強化に最適です。「根気」や「根性」などの持続力(精力)や集中力も根菜類によってもたらされます。
植物は葉っぱで発電したエネルギーを、春から夏にかけてはもっぱら自らの葉や茎の成長に使いますが、寒くなる冬になると、エネルギーをデンプンやオリゴ糖という缶詰にして根っこに蓄えます。冬場にできる根の野菜はエネルギーの蓄積量が多いので、身体が芯から温まるため、「腎」に「精気」としてエネルギーが蓄えられます。ごぼうや人参、レンコンのキンピラ、筑前煮、けんちん汁などの火のエネルギーをたっぷりかけて料理した煮物が腎の食薬になります。お正月のおせち料理でも、本来の主役は根菜類の煮物でした。吉野くずや自然薯などの陽性なデンプンも冷えの解消におすすめです。
ー「マワリテメクル小宇宙」
金平牛蒡、切り干し大根、葛湯、自然薯ご飯。
季節の根菜を、醤油や味噌や塩で煮込んだり、汁にしたり。
温かくて陽気のある体液を。
エネルギーを蓄える体内の海を大切に。
そして、腎臓に送られる血液は足元から汲み上がってくるので、足湯や腰湯、湯たんぽなどで足腰を温める事も、腎を助ける冬の養生の要になります。
ストーブの上に湯たんぽを置いてぐらぐらと。
湯気と熱気と共に暮らす。
内から外から体を温めて、温かくて元気のある血液を作って、健やかな一年をすごせる体のために、エネルギーを蓄えるような冬の養生をお楽しみください。
text by 冨田貴史
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