♫かがく かがくー サイエンスー たどり着いたのは 家庭サイエンスー♩
科学の詩 byかむあそうトライブス
幼少期、生物学者になるのが夢だった私は、自給自足の生活にたどり着き、この歌に出会い、家庭サイエンティストへの道を目指しはじめたのです。
柿の木は宝物
私のお家には立派な柿の木が5本あります。いやもっとあるかもしれないのですが、見えるところにあるのは5本です。
引っ越してきたばかりの時、近所のお姉さま(この辺ではおばあちゃんのこともお姉さんと呼びます)が「○○ちゃん、こりゃー立派な柿の木じゃ。大事にせにゃいかんよー。宝物じゃー。」と言ってくださったのがとても心に残っていて、柿の”なり年”を心待ちにしていました。
柿はだいたい2年ごとになり年がきます。
去年はひとっつも取れませんでしたので、今年は期待が高まっていました。
柿からの宝物①柿酢
柿の木にはカキノヘタムシと言うそのまんまの名前の虫がつき、カキのヘタムシに入られた柿は、完熟していないのに赤くなり、ヘタを残して実がボトッと落ちてしまいます。
あれ、今年は熟れるのが早いなぁと思っている柿はだいたい虫に入られたカキで、虫熟れと呼んでいます。
引っ越してきた年(2年前)はほとんど虫熟れでボトボト落ちていく実を見て、「宝物がー!なんとかせねば。」と始めたのが初めての柿酢作りでした。
虫熟れが始まった柿をヘタと虫の付いたところを取り除いて樽に入れておいたら、びっくりするくらいまろやかで美味しい柿酢が出来上がったのです。
柿酢の詳しい作り方はこの本に。
今年はカキノヘタムシさんになるべく入って欲しくなかったので、いろいろ対策を考えたところ、素敵な方法を発見しました。
その名も腹巻作戦!!
冬の間柿の木の幹にムシロなどを巻いて温めてあげる、すると腹巻にムシが越冬しに潜り込んでくるので、春に腹巻をとって燃やす。というもの。
この方法とウチの愛猫が柿の木の幹で爪とぎをして、虫の入りそうな固い木肌を落とす、という作戦を実行しました。
柿からの宝物②柿渋、柿の葉茶
期待通り、今年の春に元気に芽吹いた柿の木には、控えめながら、あなた柿のヘタになりますよね、というほど完成された形の萼(ガク)を伴って花がたくさん咲いたのです。
新芽はあまりにも美味しそうだったので、商店のお昼に天ぷらになって登場しました。
夏、青柿が順調にたわわになっていきます。
たくさん付いていて重たそうだったので摘果のついでに柿渋を作ってみました。
青柿を収穫し、丈夫な袋に入れてハンマーでつぶします。
それをバケツに入れて、ひたひたのお水を入れてあとは菌たちにお任せです。
「柿渋は匂いが〜」や、「手に着くと取れない〜」などと聞いていたので、どんなもんかと気合い入れて始めたのですが、『農家に教わる暮らし術』の方法で作ったらとても簡単で匂いも気になりませんでした。(筆者はもともとカメムシもスカンクも臭いと思わないのですが。)
自給自足の強い味方 柿渋
柿渋の歴史は古く、平安時代から生活の様々なところで使われてきたそうです。
ざっと挙げるだけでも、防水防腐効果、消毒効果があり、染料として、塗料として、民間療法のお薬としてなどなど。
特に注目すべきは、防水防腐効果。
三宅商店のある吉備中央町は、雲海で有名なだけあって、朝夕に霧がかかることが多くあり、特に梅雨の時期のカビ対策は必須。
古民家の防水防腐はしっかりしておかないとあっという間に木材は朽ちていきます。
天然素材でこの効果が得られるのは、改装中の我が家にとって、とても重宝しそうです。
青柿を収穫するついでに葉っぱもいただいて、洗って、干して、刻んで、蒸して、また干して、ビタミンたっぷりの柿の葉茶もできました!!
柿の木は宝物③干し柿 渋って一体なんなのさ??
秋も深まり、冬場の腹巻き作戦も功をなして、たくさんの柿が色づきました。
甘柿を使った絶品カレーのレシピは三宅商店ブログのアーカイブからどうぞ!
柿の品種は1000種類以上あるそうなのですが、なんと甘柿はたったの17種しかないんだそうです。
ほとんどが渋柿なんですね。
渋柿。
渋。。
渋ってなんなのさー??
渋の正体はみなさんおなじみのタンニンさんです。
カキタンニンは水溶性のため、食べるとお口で溶けて、あのなんとも言えない渋ーい状態になり、この日は一日何を食べてもなんだかなぁの状態になってしまうのです。
渋抜きというと渋をを取り除くというイメージがありますが、実は水溶性のタンニンをお口で溶けない不溶性に変えてあげることなのです。
その不溶性にしてくれる立役者はアセトアルデヒドさん。
アセトアルデヒド。。。ん??
そうです!お酒を飲んだ時に私たちの体の中にも作られるあの物質です。
カキタンニンがアセトアルデヒドと結びつくとお口で溶けない不溶性に変化するのです。
渋柿の渋を抜く方法はいくつかあります。
ヘタにアルコールをつける、干し柿にする、ドライアイスを使う、お湯につけるなどなど。
アルコールを使う方法はわかりやすいですね。果実にアルコールがしみこむと柿の中にアセトアルデヒドが生成され、そのアセトアルデヒドがカキタンニンと結びつき渋さを感じない形にするのです。
その他の方法で渋が抜ける秘訣は柿の呼吸に関係があります。
干し柿にすると表面に膜が張り、ドライアイスは二酸化炭素が、お湯につけると空気に触れなくなり呼吸が遮断されます。
呼吸ができなくなった果実の中で糖分がアルコールに分解され、そのアルコールによりアセトアルデヒドが生成され、アセトアルデヒドがカキタンニンと結びつき、不溶化するのです。
ここにも家庭サイエンス♫ですね!!
アルコール発酵の酵母菌は酸素がいらない嫌気性発酵がお好み。
柿の中にも私たちの体の中でもアルコールが入ると同じ物質ができるというのも発見です。
『渋い』とはもはや味覚を表すだけの言葉ではなく、趣味嗜好や、その人自身を形容する言葉となり、広まっていますね。
渋いからといって食べられないものとしてしまうのではなく、知恵と微生物たちの力によって生活になくてはならない様々なものに高めていく古の人たちの生活力。
柿の木一本で生き生きとしたパーマカルチャーの世界への入り口といざなってくれる。
やっぱり柿の木は宝物
byまゆみ
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