暮らしに活かす冬の養生〜冬の土用入り編

2019/01/17 19:15 春への土用入り

地心黄経297度、日心黄経117度地球暦が「春への土用入り」をお知らせします。


そして1月21日は、和暦最後の師走の満月。

晩冬の終局とともに、日本の暦では年の瀬が迫りつつあります。

前回の新月の部分日食を受けて、今回の満月は南北アメリカで皆既月食となります。

月の交点と月の満ち欠け、そして節気という節目が同時に重なっていく今、太陽と月と地球の結びつきを深く感じる時期になっています。

■北半球は冬から春への季節の変わり目。

今は、二十四節気における「大寒」を前に、全国的に雪景色が広がる冬真っ最中です。

そして季節が盛っていく流れに並行して、徐々に次の季節が兆してくるのが「土用」の時期。

年に4回の土用(計72日間)のうち、特に冬の土用(18日間)は、冬という季節の終りであると同時に「春夏秋冬」の四季のサイクルの終わりでもあります。


■慎重に決断するということは大局を見通すこと。

古くから土用は「柱動かすべからず、木を切るべからず」など、生活基盤や土台を変える大きな決断や引っ越しなどは慎むべき時と考えられていました。

しかし現代においては、実際は新年度を前に社会人は転入転出、学生にとっては受験シーズンなど、この時期には大きな転機が重なるものでもあります。

そして1年に4回ある土用の中でも、特にこの第4四半期の「冬の土用」は大きな変化をともなってやってきます。

土用の中でも特に変化の激しいこの時期は、あれこれまとまらないときは無理に動かず、やりたいこと、やるべきことがしっかりと整理できるまで腰を据えてじっと忍耐強く待つことが大切。

今、成すべきことだけが見えれば、注力するエネルギーはより高まり、大きな波に力強く打ち勝つことができます。

夏の土用が七夕のようにたくさんの願い事をかける時期ならば、今は対象的に正月の書き初めのように一点一局に集中することを心がけると良いでしょう。

(以上のテキストは、地球暦ホームページを元に作成しました。)

©HELIO COMPASS 地球暦


■冬至と夏至、夏と冬

 地球は地軸を傾けながら太陽のまわりをめぐっています。

その関係で、北極側が太陽の方向を向く時期と南極側が太陽の方向を向く時期が、一周の間に交互にやってきます。

前者の時期は北半球では昼が長く、夜が短くなります。

昼が長いということは太陽の熱によって温められる時間が長いという事。

夜が短いということは熱が逃げる時間が短いという事。


日本ではこの時期を「夏」とよび、北半球において昼が最も長くなる時を「夏至」と呼んでいます。


また、後者の時期は北半球では夜が長く、昼が短くなります。

夜が長いということは太陽の熱によって温められる時間が短いということ。

夜が長いということは熱が逃げる時間が長いということ。

日本ではこの時期を「冬」と呼び、北半球において夜が最も長くなるときを「冬至」と呼んでいます。


■四季のこと

冬至は冬の真ん中、夏至は夏の真ん中、春分は春の真ん中、秋分は秋の真ん中にあたります。


そして、それぞれの季節の始まりは立春・立夏・立秋・立冬と呼ばれています。


 冬至と春分の中間点が立春で、この日から始まる季節が「春」です。

 春分と夏至の中間点は立夏で、この日から始まる季節は「夏」です。

 夏至と秋分の中間点は立秋で、この日から始まる季節は「秋」です。

 秋分と冬至の中間点は立冬で、この日から始まる季節は「冬」です。



■冬のこと

夜が長く、昼が短い冬。

夜が長いということは、太陽の熱によって温められる時間が短いということ。

夜が長いということは、熱が逃げる時間が長いということ。

日本ではこの時期を「冬」と呼んでいます。

■冬の養生は、腎を大切に


陰陽五行説において、冬に対応するのは木火土金水の「水」です。

そして五臓の中で水にあたるのは腎。


「腎」は成長、発育、生殖に関する働きを生涯にわたって左右する非常に重要な生命力の元です。
この「腎」の働きを支えているのがホルモンや酵素です。
「腎」は消化液の分泌の他に、血液やホルモンなどの体液をコントロールしており、内分泌系の中心をなしています。
「腎」の衰えと共に老年期の状態がつくられます。
「腎」は生命の源であり、体に潤いと若さを与えてくれる源でもあるのです。
ー岡部賢二(『月刊マクロビオティック2008年12月号)


肝心脾肺腎の五臓はそれぞれ、肝臓や心臓といった臓器そのものではなく、働きそのものを表しています。


そしてこの腎の働きを助けるのが冬の養生の要でもありますし、冬はこの腎が弱りやすい時期でもあります。


腎の働きを担っている腎臓や膀胱は、血液や体液を司る内臓なので、それらの水が冷えていれば、その冷えそのものが負担になります。


体内を巡る血液は、一度足の裏まで降りていった後に、筋肉の収縮運動によって、腎臓に登っていき、ろ過されたり、PHバランスをチェックされたりしながら、そこを通過しています。

腎臓はおよそ180g(平均)。

この腎臓を、1日にしておよそ1.5トンの血液が通過していきます。


『家庭でできる自然療法』の中で、東城百合子さんは腎臓について、このように書かれています。


◎腎臓
細胞は常に古いものから新しいものへと新陳代謝していきます。
この古いものは老廃物として腎臓から尿として排出されます。
蛋白質をとりすぎると腎臓の負担となり、腎臓を悪くすることになります。
また腎臓に入る血液は足からもどる血液ですから、足の循環の悪いのが腎臓の働きを悪くするので、足が冷えると腎臓の働きも低下します。
血液は足の先まで流れていって、足の裏と土ふまず(足心)を中心にして筋肉の収縮力によって働きますから、足の運動はとても大切なことです。
ー『家庭でできる自然療法』著:東城百合子



味噌汁や三年番茶、梅醤番茶などをつうじて、体液、血液をきれいにすること。

アミノ酸やミネラルをしっかり摂ること。

などについては、12月4日に投稿した記事の中で、書かせていただきました。

そして、腎臓に血液が登ってくるのを助ける姿勢は「横になること」です。

特に冷えが最も強い、夜の時間に横になること。

寝入る事が出来なくても、体を横たえるだけで、腎臓に血液を送ることを助けます。

十字の漢方の大成功晃太郎氏は「22時〜02時までは必ず横になること。そうすることで、春から動くためのエネルギーを充電できる」と語り、冬に腎気を補う「補腎」のアドバイスを続けています。


腎臓のあたり(腰のくぼみあたりの背骨の左右)に直接、こんにゃく湿布や生姜湿布をして温めることも腎を助けることになりますし、足湯をすることや、湯たんぽを使うこと、くつしたのチョイスを工夫すること、体液、血液の酸化を防いだり、温めることも、腎の働きを助けることにつながります。


■そして冬の土用

季節の変わり目のそれぞれ約18日間の期間は「土用」です。

土用は、その季節のエネルギーがピークを迎えているとき。


「土用」という言葉は、もともとは「土旺用事」と呼ばれていたもの。

土旺用事とは「土の気がさかんになって働く」という意味。


 春の終わりは「春の土用」

 夏の終わりは「夏の土用」

 秋の終わりは「秋の土用」

 冬の終わりは「冬の土用」


です。

■冬の土用(1月17日ごろ〜2月3日ごろ)

冬の終わりの約十八日間は冬の土用です。

この時期は寒さ極まる「大寒」のころ。

古くは一年の中でもとりわけ気が乱れやすい「表鬼門」の時期と言われ、免疫力低下によって感染病にかかりやすくなり、肌荒れやのど風邪などの乾燥障害が起こりやすい時期でもあります。

体内の気と、外気の変化。

また、この時期に食べ過ぎると、胃腸の疲れから、食欲不振、消化力の低下、気力の低下などの出やすい時期でもあります。

消化器官の機能低下は万病の原因になると言われています。


贅沢なごちそうはほどほどに、小食を基本にして胃腸を休めることが、冬土用の養生の要です。


消化と栄養補給・分配をつかさどる「脾」に関連する味は「甘」。

甘い物のとりすぎは脾の働きに負担をかけますし、玄米やたくあん、味噌などの甘みは脾の働きを助けるといいます。


季節の甘味といえば、玄米をはじめとする全粒穀物や、さつまいもなど。


冬の土用付近にあたる和暦の大晦日は、胃腸に負担をかけない全粒穀物の蕎麦を食べ、正月には玄米餅を食べて、気を補ってきました。 


江戸時代には、土用には路上で甘酒が売られ、瀬戸内海の祝島には、この甘酒にさつまいもを入れた「かすどろ」という伝統食が伝えられています。


江戸時代までの日本においては、おかずは少なく、ご飯とみそ汁、漬物を土台にした主食を中心とした食事をしていた人が多かったといいます。


冬の土用の時期は、正月の前後にあたり、寒さ極まり転じる大きな節目です。

そしてこの頃に、煤払いや大掃除、御歳暮や年賀の挨拶といった年の瀬の風習が続きます。

一年の節目はもともと、めぐりの中に生きる自分たちの心身や場を清め、自然界や社会への感謝とお祝いの気持ちを表現する大切なひとときでした。


和暦と、そこに横たわる文化、暮らし、養生。

太陽と月の巡りと日々の暮らしをつなぎとめるものとして暦を見つめ直すこと。


冬の土用は西暦2月3日節分まで続きます。

2月4日は立春。

そして、2月5日の新月が睦月朔日、正月、年の始まりです。


今は、一年の中でもっとも寒さ極まる頃。

ぬくぬくと温かい日々をお過ごしいただけることを願っています。




※後半の図版:『春夏秋冬 土用で暮らす。五季でめぐる日本の暦』より


text by : 冨田貴史

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